University of Southern Denmark; SDU(南デンマーク大学)に1セメスター留学をした筆者は,日本との教育システムとの違いに驚きの連発.海外ならではの部分,北欧(デンマーク)ならではの部分など様々.ここでは,驚いた部分から見える日本との大学講義の違いを紹介します.
コンテンツ
初めに
私は,交換留学生として SDU(南デンマーク大学)に理系科目を中心とした講義を履修しました.きっと多くの学生が疑問に感じる「どこが違うのか」ということにフォーカスを当てて紹介します.デンマークの授業を履修して感じたことは,その国の社会の風潮が,大学教育にも反映されていたということでした.一貫して,周りがどうとかではなく,自分がどうしたいかが重要視されているのがデンマーク教育の特徴です.私は,授業で,化学反応工学,化学工学デザイン,統計学,分子生物学,ビジネス経営学・経済学の5科目の履修をしていました.
海外大学(北欧)のイメージがつかない方は,下の動画を見てみてください.動画は,スウェーデンにある Lund University のキャンパス紹介のものです.海外の大学生活の雰囲気が掴めると思います.特に北欧は税金が高いので,共通して,公立の大学は全ておしゃれで綺麗です.
講義の日本との違い
日本の授業と異なる点として,SDUでは宿題は一切でませんでした.もちろん,評価をしなければならないので,最終課題や最終発表はあります.一見これを聞くと,「めっちゃいいじゃん!!」と思うかもしれませんが,これが結構過酷です.毎回の授業で,教員から読んでほしい教科書のページや論文,私が取っていた統計学 (R言語のプログラミング) の授業ではビデオ教材などが毎回出されます.しかし,それを強制する先生は誰1人としていません.そこに,学生の意思が反映されており,ツールは渡してあるため,興味あるものは自分から取り組み,逆に興味のないものは別に勉強する必要は無いということです.質問があれば,その点のフォローは先生から受けられます.しかし,大問題は期末テストです.日本なら,宿題を提出することが点数に含まれていたり,宿題の箇所がテストに出たりするなど勉強するべきポイントが類推できます.デンマークの場合,類推が不可能なので,数千ページの教科書全てや教材がテスト範囲となり正直地獄でした.先生によっては,過去問を提示してくれるような授業もありました.
また,グループワークは確かに多かったです.授業でも,多くの先生が周りと話し合って解答させることが多く,あくまでも授業を理解するためのツールとして多用していたイメージです.日本なら,”グループワーク=点数” になるというイメージでしたが,点数のためではなく理解を深めるためにグループワークを実施するといった感じです.
もう一つ大きく違う点として,デンマークの授業は全ての授業で出席を取らないことです.日本では,出席点がある科目もあるので,嫌でも出席して後ろの席でスマホやパソコンをいじることも多いですよねw.デンマークの場合,行きたく無い場合は学生は参加しないので,勉強したい人が授業に参加しています.また,驚きだったのが,週1科目の授業が,日本なら一コマ90-100分ですが,デンマークでは,1科目4時間というとんでもなく長丁場です.学部や科目によって異なりましたが,私がいた工学部は大方,朝の8:00-12:00もしくは,12:00-16:00, 16:00-20:00という時間割です.なので,人によっては,途中から参加する人もいましたしたし,途中退出する人も多かったです.

自由度MAX
先ほどの途中退出に関係しますが,本当に自由に出入りしますw.一番驚きだったのが,朝の1限目が始まり30-40分経ったところで,仲の良い一番前に座っていた3人組が退出し始めました.日本の授業でそれが行われたなら,ザワザワしますし,教授からのバッシングを喰らいそうです.するとその3人組は,満面の笑みで教授に手を振り,教授も笑顔に手を振り返してました.「どーいう状況!?」とツッコミたくなりますよね.その状況を多くの日本人は,「そんなの社会に出て通用せんぞ!」となるかもしれませんが,デンマーク社会では通用するから許容されるんだと思います.デンマーク人から聞いた話では,家族サービスを重要視するデンマークでは,会社の会議の途中でも,用事があれば退出をするそうで,別にそれを問題視する人はいないそうです.そういう観点でも,本人の意志が何よりも大事で,それが大学社会にも反映されていました.
デンマーク人はビールが大好きです.物価が高いことでも知られているデンマークですが,ビールはコーラよりも安く,スーパーでは1瓶 2-3DKK (40-50円) 前後でビールが買えます.また,1人あたり消費量も日本人の1.8倍(「2020年 世界主要国のビール消費量」, キリンホールディングス株式会社)だそうです.そんなビールを愛する国の大学には,なんと,売店でビールが売っていますし,大学内にバーがあります.また,多くの大学や学校の寮にもバーがあるほどです.そのため,金曜日になると学食では,学生が集まり,ケース買いをしたビールを皆んなで囲む光景が日常でした.その波は授業にももちろん押し寄せ,下の写真にあるように,金曜日の午後の授業では,ビール片手に履修している人がいます.まあ,他の留学生に聞くと,デンマークだから許されるといっていました.

関連記事

グローバルと騒がれる中,理系にとっての留学とは.本当に必要か.留学がどのようにメリットになるか.
上下関係が無い!?
皆さんは,教授と話をするとき,敬意を表して敬語で話し,呼ぶ際は,〇〇先生もしくは〇〇教授といった感じで接しますよね.これは,デンマークに限った話なのかもしれませんが(フィンランドも?),デンマークの学生は先生を呼ぶ際は,下の名前やニックネームで呼びます.これは,他のヨーロッパの学生からも驚きのようで,普通は “Professor, Mr, Ms” をつけるのが一般です.
下の動画は,Tal Fishman さんという Yutuber の “Reaction Time” の動画で,アメリカの学生が,先生に対して下の名前で呼ぶとどうなるかといったリアクション動画です.
動画をみると先生の反応はそれぞれで,フレンドリーな先生もいらっしゃいますが,多くの先生は戸惑ったり中には怒った表情をしています.他の動画では “Go to my office!!” と怒鳴る場面も見られました.動画を見る限り,中学や高校といった感じですので,大学では絶対にやってはいけないことだと想像できます.
デンマーク社会ではあまり上下関係が強くは無いのだとそこから感じ取れます.また,グループワークで教授に質問をしようとなった際に,1人の学生がスクリーンにメール画面を共有し,その文面が “Hi Matthew!” に始まり,最後にはダメ押しの😀の絵文字で締めくくられていました.それが許されるのって凄いなと驚きの連発でした.
期末テストが過酷?容易?
私の在籍していたSDUでは,テスト期間が1ヶ月という長期設定されていました.テスト形式は様々で,筆記試験だったり,プログラミングのデータを提出したりと,日本のテストと似たような形式も多くありました.
しかし,デンマークの大きな特徴として,口頭試問をテストとする授業が半分近くあるという悲劇でした.私が履修した5科目のうち2科目が口頭試問でした.ビジネス経営学・経済学のテストは,千ページ近い教科書2冊から出題するという暴挙で,理系の私は予備知識もなく,諦めた教授は,余った時間で,世間話をするという泥試合.案の定落としましたw.
そして,もう1科目は,化学工学で,物質を精製する化学プラントをデザインするという授業でした.与えられた課題を2−3ヶ月かけてグループで設計をし,最終課題として教授に提出をします.その後,最終評価として,各自課題の内容を教授にプレゼン15分,質疑応答15分というとんでも授業でした.私の出身が生命科学ということもあり,さっぱりわからなかったのですが,幸運なことに,グループワークのデンマーク人の3人がとても優しく,幾度も丁寧に教えてくれてくれました.最初は,グループワークもプレゼンも乗る気ではなくビクビクしながら前半の授業を受けていましたが,その3人がいつも優しくしてくれて,デンマークの話やお菓子などを毎回振る舞ってくれていたので,課題にあまり貢献できませんでしたが,楽しみにしていたのを覚えています.口頭試問当日,Zoomに入ると,教授が2人おり,課題の内容をなんとか説明をし,質疑応答ではズタボロにされた挙句,「あまり,理解してないよね」と言われ死を覚悟しました.その場で結果を伝えられ,課題の内容がちゃんとしているということを考慮していただき,なんとか合格を頂きました.結局,課題は私の意向はほぼゼロなんですけどねw.みんなありがとう.

もう一つの驚きだったのが,R言語の統計学を用いたプログラミングのテストです.その授業は,与えられた試験問題をパソコン上でコードを用いてデータを提出します.テストのルールとして,友達と相談することは禁止,わからなかったら調べて良いというもので,先生推奨は “Google検索” でしたw.ユーモアたっぷりの先生で,テスト中の緊張をほぐす方法として “Spotify” を聴きながらテストを受けることでした.「いや,音楽聴きながらでもいいんかーい」日本なら間違いなくカンニング行為です.
最後に
「嘘でしょ?」と思う方や,面白そうと思った方は,是非留学を検討してみてください.きっと,新たな知見を得られるはずです.
あくまでの個人の感想として,日本の大学教育の延長線上にあるのは “個人の評価” で,デンマークの大学教育の延長線上にあるのは “社会で生き抜く能力の習得” だと感じました.もちろん,数十年前のコンピューターやソフトが身近では無い時代なら,日本人ができる高度な数学や様々な公式の暗記は役に立ったのかもしれません.しかし,現代においては,高度な計算であればスーパーコンピューターが実行し,公式は検索すればわかります.大学院で研究をしていて,分析ツールを扱える能力(コンピュータ言語)や大量の情報や論文から自分にとって有益な情報を取り出す能力,それらでまとめた結果を言葉にして説明する能力が大切です.そういう社会を生き抜くなら,テスト中に “Google検索” することは,カンニングではないですし,口頭試問も理にかなった能力の審査の方法です.授業中にビールを飲もうが,テスト中に飯を食べようが Spotify を聞こうが,途中入室や退出をしようが本人の集中力を高められ,それが結果に結びつくのであれば認められるべき行為なのかと.
また,日本の大学は外国籍の先生が異常に少ない.国立,私立共に,採用する上で日本語ができることが前提なんだと思う.それはおそらく,大学運営をする上で教員側が楽だから.現に,これまでお会いした外国籍の教員は国立私立関係なく全員日本語が上手で,階級が上がるにつれて日本語能力がより高い.しかし,SDUの場合,外国籍の教員や研究員は非常に多くいたが,そのほとんどがデンマーク語を話すことができない.デンマーク語ができない教員なら,仮に相手がデンマーク人学生であっても英語で授業やディスカッションが行われる.日本でこれをするのは,かなりハードルが高いのかもしれないが,より良い研究や大学を目指すのなら,少しずつ変わる必要があるかと.
大学事情の記事を読むと,日本の大学教育は終わってるだの,海外の方が絶対いいというのもちらほら読みます.先に挙げた部分などのどこか時代の変化に合わせた改革を進めるべきだとは思いますが,世界と比すると独自ながらも歴史上では優れた人物を輩出しているのも事実です.なので,これまでの良い部分は残しつつ進化してほしいなと学生ながら考えます.
この記事に合わせて,海外(デンマーク)と日本の研究室事情について書いてます.興味のある方は読んでみてください.
関連記事
留学経験をもとに,日本の研究室と海外(デンマーク)の研究室の違いについて紹介.
アメリカでもイギリスでもなくデンマークを僕が留学先に選んだわけ
理系の大学生の私がなぜデンマークを留学先を選んだのかについて紹介.
支給額が高額とされる業務スーパー奨学金の詳細と体験談.



